お酒は筋肉にどう影響する?―「筋トレ民」のための科学的まとめ
「たまの飲み会くらい、筋肉に関係ないでしょ?」と思いがちですが、アルコールは“筋肉が回復して強くなるプロセス”のいくつかにブレーキをかけます。ポイントは、量とタイミング、そして慢性的に飲むかです。
結論(先に要点)
- トレ後の多量飲酒は、筋タンパク質合成(MPS)を下げる:運動+栄養を入れても、アルコールが入ると合成が落ちた研究があります。特に「タンパク質なし+飲酒」が最悪パターン。
- ホルモン環境(コルチゾール↑/テストステロンとの比↓)が悪化しうる:筋力回復自体は短期的に大差がなくても、長期的には不利になり得る、という示唆。
- 持久系・連日トレ寄りの人は、糖質の“置き換え”に注意:アルコールで糖質摂取が減ると、筋グリコーゲン回復が落ちやすい。
- 慢性的な大量飲酒は、筋萎縮(アルコール性ミオパチー)に直結しうる:筋力低下・筋量低下が臨床的にも問題になります。
1. 筋肉が増える仕組みと、アルコールが邪魔をする場所
筋肥大・回復の中心は、ざっくり言うと
筋トレ刺激 →(栄養/睡眠/回復)→ 筋タンパク質合成(MPS)が上がる → 適応
という流れです。
この「合成スイッチ」の代表が mTOR 系(mTORC1)で、運動刺激とアミノ酸(特にロイシン)などの栄養刺激を統合して、筋タンパク合成を押し上げます。ところが、アルコールはこの経路のシグナルを弱めることが示されています。
参考図(mTOR経路のイメージ)
2. 「飲むと筋肉がつかない」は本当?—MPS(筋タンパク質合成)の研究
運動後にアルコールを摂取した場合、筋タンパク質合成(MPS)が下がることを示した代表的研究があります。
あるクロスオーバー試験では、運動後に
- タンパク質(ホエイ 25g)
- アルコール+タンパク質
- アルコール+糖質(エネルギーは同等)
を比較したところ、タンパク質のみに比べて、 - アルコール+タンパク質:MPSが約24%低下
- アルコール+糖質:MPSが約37%低下
という「段階的な低下」が報告されました。「タンパク質を入れても“部分的にしか救えない”」のが痛いところです。
この研究でのアルコール量はかなり多く(運動後の“飲み会”を想定した設計)、いわゆる「たまの1杯」ではありません。とはいえ、“多量+回復期”が最も筋肉に不利という方向性は押さえておく価値があります。
3. 筋力回復は“すぐには”落ちないこともある。でもホルモンは要注意
「じゃあ飲んでも、次の日の筋力が戻ってるならOK?」という話もあります。
抵抗運動後にエタノールを摂取した試験では、筋力・ジャンプなどの回復が大きく遅れない一方で、高用量でコルチゾールが上がり、遊離テストステロン/コルチゾール比が低下したことが報告されています。著者らは、短期のパフォーマンスに見えにくくても、長期的には不利になり得ると示唆しています。
「結果がすぐ出ないダメージ(回復の質の悪化)」が、積み重なると痛いタイプです。
4. グリコーゲン回復:アルコール“そのもの”より「糖質の置き換え」が問題になりやすい
持久系や高頻度トレの人は、筋グリコーゲン回復が次のパフォーマンスに直結します。
サイクリストで、運動後の回復食においてアルコールを摂る条件を比較した研究では、アルコールが糖質摂取を押しのけた条件で、筋グリコーゲン貯蔵が低下しました。著者らは、**アルコールの“直接作用は不明確”で、主因は糖質の置き換え(最適な回復栄養の崩れ)**と結論づけています。
つまり「飲むなら、糖質・食事が削れない設計」が重要です。
5. 慢性的な大量飲酒:アルコール性ミオパチー(筋障害)のリスク
ここは“筋トレの工夫”では済まない領域です。
慢性的な大量飲酒では、アルコール性ミオパチーとして筋力低下・筋量低下が起こり得ます。レビューでは、慢性アルコール使用者での有病率や、タンパク質合成低下(mTOR系の抑制)、炎症・酸化ストレス、再生能力低下など複数機序がまとめられています。
6. 「飲むならどうする?」現実的なダメージコントロール
完全にゼロにできない人向けに、研究の方向性から現実的な優先順位を並べます。
- トレ直後~回復期の“多量飲酒”は避ける(最優先)
運動後のMPS低下が示されているのは、主にこのパターンです。 - タンパク質は“飲酒で帳消し”にならないが、入れた方がマシ
タンパク質併用でもMPSは下がった一方、糖質のみよりは低下が小さかった、という結果です。 - 糖質を削らない(特に翌日も動く人)
グリコーゲン回復は“アルコールで食事が崩れる”のが問題になりやすい。 - 翌日のパフォーマンスが戻っていても、ホルモン面の悪化は起こり得る
短期指標が無事でも、コンディションの“質”が落ちる可能性。
免責(大事)
本記事は一般的な情報提供で、医療アドバイスではありません。飲酒習慣や体調、服薬状況によってリスクは変わります。心配がある場合は医療者に相談してください。アルコール依存や離脱症状が疑われる場合は、自己判断での断酒ではなく専門的支援が安全です。
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